【特集】fragment edge 本公演発表に寄せて 〜ゆるっとトーク〜



話したかった人:淡乃晶  /  付き合ってくれた人:大井克弘



「およそ5年ぶりの本公演発表なので、何か記録を残したい」ということで、大井さんに付き合って貰いました(淡乃)



淡乃:いや、5年ぶりですね。


大井:5年ぶり。いや、なんか、5年ぶりって言っても、あっという間な感じも。


淡乃:どうでしたか。5年何やってました?


大井:色々変化があったよね。この5年は。芝居から離れたわけでもないけど、ちょっと仕事を変えたりとか。 1回、就職したりもしてたんですけども。結局、仕事辞めて、芝居ができる環境を作って。


淡乃:大井さんは役者として今活躍をしてる感じね。


大井:そうだね、俺の5年はね。淡乃くんは、どうでした?


淡乃:最後に本公演をやったのが『禽獣のクルパ-Avalon-』それが2019年。以降からもうコロナ禍に入って、そこからそもそも舞台表現をするかどうか、みたいなところをみんな考えたと思うんだけど。僕も例外なく考えて。いろんな表現を模索してきたかな。音声作品から始まって、去年ぐらいから朗読で舞台表現に復帰した。 でも朗読って言っても普通の朗読じゃなくて…(笑) 表現の仕方を変えるみたいなことをチャレンジして。まあ表現だけはやめなかったかな。


大井:フィールドが変わったって感じだね、淡乃くん。


淡乃:そうだね。これはずっと昔からだけど、表現したいことがまずあって、媒体(表現方法)はその時々で変える。媒体にこだわらないってことを意識してきたから、それがよく作用したかもしれないね、コロナ以降になっても。やりたいこと、例えば、百合だったりとか人の感情の話とか、軸はブレてないつもり。大井さんはfragment edgeをメインにやってないこの数年も、僕の変遷を見てきてくれたじゃないですか。


大井:そうそう。そばでね、色々一緒にやらせてもらったし。


淡乃:どう見えてるんですか、この流れというか。


大井:こっちとしては主にスタッフとしての手伝いが多かったけども、なんかやっぱ今自分がどういうものを作れるのかっていうのを常に追求してるなって見てて思ってた。


淡乃:おー、そんな前向きな。


大井:本当本当。この時代、自分がどういうものを作ってお客さんに見せていけるのかっていうのをやっぱ色々考えてるなって。


淡乃:前のやり方を引き継いではいけないっていうかね。やっぱさ、舞台表現って生ものっていうか、リアルタイムなものじゃないですか。時代が変わったり、人の温度感、肌感が変わったりね。 同じやり方をいつまでも続けるんじゃなくて、「本当にそうかな?」って疑う。「大丈夫か?これで?」ってことを考えながらやっていかなきゃいけない。だからそういう風になったと思う。別にかつての表現が嫌いになったとかではなくて、ただ、今の時代に合うこととか、今の時代の肌感を捉えなきゃできないだろうなっていう。あと、物理的に厳しかったしね。


大井:それもあったよね。


淡乃:コロナ以降で配信や声のメディアが発展していって、その流れを感じながら声の表現、音声作品・朗読に取り組んできた。それを続けて今ある程度、自分の表現みたいなことを見出し始めた感じ。


大井:淡乃くんのスタイルを確立してきたよね、この数年は。


淡乃:朗読で紙を捨てる演出だったりとかね。これかなっていうのが、ちょっとね、見え始めたのかな。


大井:そうね。朗読でもね、結構、照明にもだいぶこだわってるもんね。極力暗くするとか。


淡乃:あー、そうだね。声と音が、聴覚が優位な表現だからね。昔、舞台でバチバチ視覚をやってた僕が、今ほとんど真っ暗でやるみたいな感じでやってるから、全然違うんじゃないかなとは(笑)。


大井:昔は、舞台はやっぱほら、視覚の方がメインだったからさ、すごい美しいとかさ、そういうのこだわってたじゃん。


淡乃:絵の美しさだったね。絵の美しさを追いかけて、 その瞬間が絵画になって、瞬間を繋いでいくみたいなやり方をしてたけど。


大井:朗読はどちらかというとさ、体感させるっていうのが結構メインというか。見てる側としては。


淡乃:そうだね。感じるとか、目に見えてる情報だけじゃなくて、それ以上のものを感じたいかなっていう。視覚以上の何か、心とか内側で立ち上がるものを作りたいっていうのは、朗読をやっていながら感じてきたことかな。でも、本来舞台ってそうだったのでは…?みたいなことも思うようになったから。小さい場所から大きなスケールへ導かれるとかさ。そういう視点を持ち始めてから、舞台表現をまたやってもいいかなみたいなことは思い始めてたんだよね、この数年ね。


大井:はいはい。


淡乃;前のやり方を踏襲するのは自分の中ではビジョンが見えなくて。 気持ち的には、応援してくれるお客さんもいたし、役者のみんなからもやって欲しいみたいな声はもらってたから、応えたい気持ちはあったんだけど…。ただ中々しっくりこなくて。過去をなぞりたくないけど、そうなっちゃいそうで…。でも今、朗読とか音声作品とかを通過した上でだったら、もう見え方が違うから、 表現への向き合い方が違う感覚になれるなら、やってもありかなと。


大井:で、その様々な経験を持った上で、今度また新しい企画に挑戦するわけなんだけど、今、淡乃くん的には今どんな気持ちですか?


淡乃:進行してくれた(笑)。 これから作っていく感じではあるんだけど……ひとつ思ってるのは、「演劇」っていうジャンルにしないことかな。元々fragment edgeって「枠にとらわれないエンターテイメントを目指している」っていうのを昔掲げてたんだけど、そこに立ち返りたくて。演劇という媒体を取りながら、違う要素を入れて変化させたかった、とかあってね。あり得ないものや違ったものの掛け合わせを面白がるみたいなところがあったんだよね、自分は。今回は「演劇をやるぞ」って感じじゃなくて、お客さんと、演者と、スタッフと、みんなが存在する空間の中で、どんな表現ができるかっていうところを意識してやりたい。そういう意味では、どういう気持ちかっていうと「わ、どうなるんだろう」ってことと(笑)新しい世界が見えたらいいなっていう、未来に希望を持ちたいなっていうことがあるかな。音声作品やって朗読やって展示も演劇もやって、しかも百合で。この経歴を通ってきた作家は他にいないと思うから、要素を全部入れた方がよいなという感じはある。


大井:でもやっぱワクワクしたいね。


淡乃:そうだね、ワクワクしたい。久しぶりなので大きくはやらないけども。自分たちの表現を自由にやってみようかっていうところで、企画が始まってるからね。ただこんな色々話してきたけど、「相変わらずメイドかよ!」って感じはあるかもしれない(笑)。変わんねえなみたいな。


大井:やっぱ淡乃くんはメイドってイメージあるかもね(笑)。


淡乃:あいつ変わんねえなみたいな感じではあるけど(笑)。結局創作したい欲でいうと、これはもうエゴの話になってしまうけど、世の中にないものが作りたい、価値がまだ判定されてないものを出してみたいっていうのがあるから。知ってるけど知らないもの、知らないけど知ってるもの、みたいなね。例のごとく実験作になるんじゃないかという気はしてるんだけど、その中で来てくれたお客さんのかけがえのない瞬間になれたらね。


大井:会場も探したよね、今回。


淡乃:大井さんと色々回ったよね。足運んで見に行って。今回やる場所は入って割とすぐ「ここかもしれない」みたいな話は出たよね。


大井:ね。劇場ともまた違う空間だから、そこでどう行われるんだろうってことが俺も楽しみだし。


淡乃:5年経ったから、みんな人生のフェーズが色々変わったわけで。それは自分も例外じゃない。次いつやるのか、そもそもやれるのかわかんないというのも正直あるから、もし興味があったら足を運んでもらえたら嬉しいなとは思いますね。


大井:そして、あれだよね、今回オーディションもやるっていう話。


淡乃: 新しい役者さんとどう出会ったらいいかわからないっていう状態ではあるので「一緒に創作してみたいな」とか「興味あるな」って方がいたら、あんまり構えないで応募してくれたら嬉しいかな。オーディションっていう名前だとハードルを感じる人もいると思うんですけど。でも、それをちょっと1回ね、飛び越えて、応募してきてもらえたら嬉しいよね。今回ちいさい規模ではあるんだけども。


大井:(作品の)お話のこと、ちょっとだけ話す?


淡乃:そうね。未来の話をしようかなと思っていて。 今の現状から進んでいった先で、どう生きてるんだろうとか、変化した先でも、変化していく中で「変わることと変わらないこと」みたいな。よくあるけど、そこをやってみようかなと。そもそも自分が一番最初に書いたお話が終末もの(世界が1週間で終わってしまう話)で、 再開するにあたって自分の好きなものは出してみたいなと。どういう作家なのか、もう一度知って貰えたらなって。


大井:うん。


淡乃:絶望的な状況であっても、人と人が巡り会えることの奇跡とか、分かり合えないけど分かり合いたい気持ちだったり、割り切れない心の話とかを描いていきたいですね。相変わらず。


大井:うん。いや、楽しみだな。


淡乃:fragment edgeメンバーはみんな何かしらには関わると思います。公演は6月なのでまだ先になりますが、2025年の新作、ぜひよろしくお願いします。



2024年12月某日



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